漫画「日出処の天子」の感想

山岸凉子による漫画「日出処の天子」は、古代日本の聖徳太子を描いた作品である。全7巻で、1980年から1987年にかけて白泉社花とゆめ」に連載された。

本作は、聖徳太子こと厩戸皇子の幼少期から、蘇我氏との権力闘争、そして仏教の受容に至るまでの半生を描いている。

物語の中心人物である厩戸皇子は、幼い頃から聡明で、その才能は蘇我蝦夷に見込まれる。しかし、厩戸皇子は、人間の欲望や嫉妬といった醜い心にも気づき、次第に孤独感を抱くようになる。

そんな中、厩戸皇子は、蘇我蝦夷の妹である日羅と出会う。日羅は、厩戸皇子に唯一理解を示し、心の支えとなってくれる存在となる。

しかし、日羅は、蘇我氏の権力闘争に巻き込まれ、命を落としてしまう。日羅の死は、厩戸皇子にとって大きな悲しみとなり、彼は仏教に救いを求めるようになる。

本作は、古代日本の歴史を背景に、人間の愛と孤独、そして宗教の力を描いた作品である。

以下、本作の魅力について、いくつかの観点から述べていきたい。

1. 繊細かつ美麗な絵

本作の絵は、山岸凉子氏の繊細かつ美麗な画風によって、古代日本の世界が生き生きと描かれている。特に、自然の描写は、その情景を目の前にしているかのような臨場感を覚えさせる。

また、登場人物の表情や仕草も、繊細に描かれており、彼らの感情や心情を細やかに表現している。

2. 複雑で深みのある人間ドラマ

本作は、厩戸皇子を中心に、蘇我氏物部氏など、当時の権力闘争に巻き込まれた人々の物語でもある。

彼らは、それぞれに信念や欲望を抱えており、対立や葛藤を繰り返しながら、生きていく。

そうした人間ドラマは、単なる歴史物語にとどまらず、現代にも通じる普遍的なテーマを内包している。

3. 仏教の深遠な思想

本作は、仏教の受容に大きく貢献した聖徳太子の物語でもある。

物語の中では、仏教の教えが、厩戸皇子の心の支えとなり、彼の生き方を変えていく様子が描かれている。

そうした仏教の深遠な思想は、現代の読者にも新たな視点を与えてくれるだろう。

4. 時代を超えた普遍性

本作は、古代日本の物語であるが、そのテーマやメッセージは、現代にも通じる普遍性を持っている。

例えば、人間の愛と孤独、権力闘争の虚しさ、そして宗教の力といったテーマは、古今東西のあらゆる時代で人々が向き合ってきたものである。

そうしたテーマを、古代日本の歴史を背景に、繊細かつ美麗な絵と深みのある人間ドラマによって描き出した本作は、時代を超えて読者を魅了し続けるだろう。

総評

日出処の天子」は、古代日本の歴史を背景に、人間の愛と孤独、そして宗教の力を描いた、傑作漫画である。

繊細かつ美麗な絵、複雑で深みのある人間ドラマ、仏教の深遠な思想、そして時代を超えた普遍性といった、本作の魅力は枚挙にいとまがない。

まだ本作を読んだことがないという方は、ぜひ一度読んでみていただきたい。

以下、本作の個人的な感想を述べてみたい。

私は、本作を初めて読んだとき、その美しい絵と深みのあるストーリーに圧倒された。特に、厩戸皇子と日羅の恋物語は、切なくも美しく、心に深く刻まれた。

また、本作を通じて、仏教の教えの深遠さにも触れることができた。仏教の教えは、単に宗教的な教えにとどまらず、人生を生きる上での指針を与えてくれるものである。

本作は、私にとって、人生の教科書のような存在になった。